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桜散る中 第二章

満開の桜並木のキャンパス。周りには親子連れや新入生が桜を見ながら「きれい、きれい」と囁き合っている。
私は少しうつむきながらスーツの襟を直し足を速めた。
今日は大学の入学式。皆、新生活の始まりを桜に祝福されながら目を輝かせている。私は、というと…。
私はあまり桜が好きではない。確かに綺麗だとは思う。しかし、あの儚げな色を見ていると、どうしても「別れ」を連想してしまう。ひねくれているなと自分でも思う。そもそも何故桜が好きではないと白い目で見られるのか。
だから日本人は嫌いだ。多数とは違う人間を徹底的に排除しようとする。個性を伸ばすというお題目のゆとり教育でも、馬鹿な教師は私のような者を必死になって鋳型にはめようとしていた。当然、友達もいなかった。

「あの、すみません」
突然後ろから話しかけられて少しびっくりしながらも私は振り向いた。そこには綺麗な髪と端正な顔立ちをした女性が立っていた。おまけに目はきらきらと潤んだように輝いている。スーツを着ているところを見ると彼女も新入生なのだろう。
「あの、目薬持ってます?コンタクトが乾いちゃって」
何だ…、目が潤んでたのはそのせいか。そう思うと急におかしくなってくすりと吹き出してしまった。不躾な私に対し、彼女の表情が一瞬曇ったかと思うと、急に何かに怯えるような不安そうな顔になった。
「ごめんなさい、目薬持ってますよ」
失礼なことをしてしまったので、詫びを入れつつ目薬を差し出した。
「使ってもいいですか?」
「もちろん」
私がそう言うと彼女は目薬をさし始めた。こんな可愛い娘でも目薬をさす時は口が開くのかと思うと同時に、初めて目薬をさす行為が美しいと思った。こんなに可愛ければ多少皆と考え方が違っても反故にされることもなかっただろうなどと考えていると、彼女は目薬を返してきた。
「ありがとうございます。助かりました」
「どういたしまして。ねえ、何でコンタクトしてるのに目薬持ってないの?」
「今朝寝坊しちゃって、鞄に入れ忘れたの。だから本当に助かりました」
彼女はとても素敵な笑顔でお礼を言った。その顔を見て、もう少しこの娘と話してみたいなと思い、
「スーツ着てるってことはあなたも新入生?」
「はい。啓子っていいます。あ、あなたもそうなんですか?」
「ええ、あけみっていうの。よろしくね。あと、いくら私が老けてるからって敬語は使わなくていいわよ」
冗談のつもりで言ったのだが、彼女はまたさっきの怯えるような表情になり、
「ごめんなさい、そんなつもりじゃなかったの」
「冗談よ、だからそんなに恐がらないでよ。さ、行きましょ」
彼女は一瞬躊躇したあと、すぐに笑顔で頷き、私の隣を歩き始めた。

これが啓子との最初の出会いである。

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COMMENTS

いよいよ
本編が開始された訳ですねw
どうやって周りの人を不幸にさせてしまうのかが楽しみです。
私、自身も大学4年生なので共感できるところが多そうなので楽しみにしていますよ。w

>>SE・志望さん
主人公の彼女らの年代ならではの気持ちの変化を感じていただければより感情移入できると思いますよ(゜∀゜)

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